フェレット 副腎腫瘍 | 上大岡キルシェ動物医療センター上大岡キルシェ動物医療センター

フェレット 副腎腫瘍 

フェレット

フェレット 副腎腫瘍 

2016年09月21日 投稿者:staff

カテゴリー:フェレット 症例紹介 腫瘍

フェレット、三歳の男の子の症例です。

 

急に元気がなくなり、近医を受診し、腹部に塊があるとの診断を受け、当院を紹介され、来院されました。

 

当院来院時は、虚脱し危険な状態でした。

血液検査にて、低カリウム血症、黄疸を認め、

超音波検査にて、右副腎領域に2cm大の腫瘤が見つかりました。

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腫瘤はかなり大きく、近くを走行する、後大静脈内に侵入している様子でした。

また、心臓は不整脈を起こし、動きもかなり弱っている状態でした。

 

右副腎腫瘍の影響により、低カリウム血症から、心臓機能低下を引き起こし、虚脱していると診断しました。

フェレットの副腎腫瘍は性ホルモン産生性であることが一般的で、今回のようにカリウムなどのミネラルイオンバランスが乱れるタイプはあまり一般的ではありません。

 

カリウムの補正を中心に、集中治療を開始したところ、比較的早期に状態の良化が認められました。

 

そこで、いよいよ原因治療の検討です。

副腎腫瘍への治療法は大きく分けて、内科治療と外科治療があります。

内科治療は副腎から放出されるホルモンの働きを抑制する薬剤を定期的に投与していく方法です。

外科治療は腫瘤の摘出ですので、効果が大きいのですが、リスクもあります。

特に右側の副腎腫瘍は大血管が近いことから、左側のものに比較して、摘出が難しいことがあります。

 

まだ3歳と若いこと、一般的な副腎腫瘍とタイプが異なり内科治療の反応が期待しにくいことから、ご家族様は手術による外科治療を選択されました。

 

画像検査による予想通り、腫瘍は肝臓、後大静脈内へ足を伸ばすように腫大、進展していました。

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後大静脈は下半身の血流を集め、心臓へと還している非常に重要な血管です。

通常であれば、この血管を遮断すると生きてはいけません。

しかし、今回の場合は腫瘍が後大静脈の大部分を塞いでいる状態が持続していたため、他のルートによる側副循環が育っている可能性がありました。

術中にその可能性が高いと判断し、右副腎腫瘍を肝臓の一部、後大静脈毎、一括切除しました。

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術後、すぐにカリウムは正常値まで落ち着き、驚異的な回復をみせ、元気に退院できました。

腫瘍は病理検査にて、かなり悪性度の高い、副腎腺癌と診断されました。

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今後は、転移や再発がないかの経過観察をしていくことになります。