犬 前立腺腫瘤 尿路閉塞 | 上大岡キルシェ動物医療センター上大岡キルシェ動物医療センター

犬 前立腺腫瘤 尿路閉塞

泌尿器

犬 前立腺腫瘤 尿路閉塞

2017年10月09日 投稿者:staff

カテゴリー:泌尿器 症例紹介

犬、フレンチブルドッグ、7歳の去勢済みの男の子の症例です。

 

尿と便が出せずに苦しんでいるとのことで来院されました。

超音波検査にて、拡張した前立腺と腫大化したリンパ節が膀胱や直腸を圧迫している状態であることを確認できました。

 

拡張した前立腺

腫大したリンパ節

 

前立腺から貯留液を採材し、細菌培養検査を行ったところ、使用可能な抗生剤には耐性をもつ菌が認められましたので、抗生剤投与による内科治療に期待はできませんでした。

尿道カテーテルもうまく前立腺部から奥まで通すことができず、導尿も困難な状態でした。

 

そこで、物理的に圧迫の解除、骨盤腔のスペースの拡張、組織採材、導尿ルートの確保を目的に外科手術を行うことになりました。

 

開腹とともに、拡張した前立腺とリンパ節が確認できました。

 

手術操作をしやすくするため、前立腺の貯留液を抜去しました。

200ccの液体を抜去

 

その後、骨盤腔の拡張と手術操作のために骨盤骨を一部切除しました。

つづいて、前立腺を切除し、膀胱・尿道を吻合しました。

前立腺部尿道切除

  

その後、背部のリンパ節を採材し、閉腹しました。

術後は順調に回復し、自律排尿排便が可能になりました。

 

病理組織検査では、

前立腺は壊死性、化膿性、肉芽腫性炎症で腫瘍性病変なし、リンパ節は腫瘍の転移を疑いあり、といった結果でした。

去勢済みで、前立腺が腫瘍以外の病因で腫大する可能性は低いと考えられましたが、この子は二年前に停留精巣を摘出したという既往歴があり、その精巣が腫瘍だった可能性があります。

 

現在はリンパ節の腫大傾向を追いつつ、要注意経過観察中です。