症例はリチャードソンジリス、4歳1ヵ月齢のメスです。体重は571gでした。
3日前より右後ろ足を引きずっていて、動きが悪いとの主訴で受診されました。
レントゲン撮影を実施したところ、右後肢脛腓骨に斜骨折が認められました。
体格や骨のサイズから、ピンニングと包帯による外固定を検討しました。
しかし、特徴的な体格から包帯による外固定は安定しない可能性や、齧られてしまう可能性から断念しました。
そこで、足首の関節ごとピンを通すことでピンのルーズニングを防ぎ、固定力を確保することにしました。
血管や筋肉をできるだけ傷つけない様に骨折部位を露出します。骨の内腔(髄腔)にピンを挿入していきます。
挿入したピンを軸に骨折断端を合わせていきます。
無理に力を加えると骨が割れてしまったりするため、糸などを用いて牽引します。
レントゲン撮影を行い、位置を確認しながら慎重にピンを挿入していきます。
挿入したピンの両端を曲げることで、ピンが抜けることを防いでいます。
足首を固定することになるため、できるだけ自然な角度になる様調整します。
縫合糸などを用いて骨折部位を補強し、創を閉じます。
術後も大きなピンのズレは認められず、足裏からピンが飛び出すこともありませんでした。
インプラントとされるこの様なピンなどは抜去が前提にはなりますが、骨の強度や部位などから抜去しない選択をすることも少なくありません。今回の症例も抜去せずに経過をみました。
やや歩行に違和感は残るものの、日常生活に問題はなく元気に走り回ってくれています。