ギリシャリクガメ、14歳7カ月齢、女の子の症例です。
五日前からの食欲不振、嘔吐を主訴に来院されました。
身体検査にて脱水、口回りの酸味臭、
血液検査にて腎機能の低下、X線検査にて消化管の拡張、
バリウムによる消化管造影検査にて、消化管の閉塞を認めました。
消化管機能改善薬や点滴での治療にも反応が認められず、食欲廃絶、嘔吐が続いたため、
開腹し消化管閉塞を解除する外科手術を行う事になりました。
気管挿管をし、吸入麻酔管理下にて手術を行いました。
ソーを用い、甲羅を切開し、開腹しました。
産卵歴もあり、今後の卵詰まりのリスクを防ぐために、卵巣摘出を行いました。
消化管の閉塞部位をみつけましたが、閉塞部周囲では消化管粘膜が損傷しており、複数個所で消化管が穿孔している状態でした。
まず閉塞部の消化管を切開し、異物を摘出しました。
異物は床剤にしようしていたというウッドチップでした。
その後、損傷している消化管を切除し、消化管を吻合することになりました。
しかし、爬虫類の消化管は細く、粘膜構造も非常にもろいため、犬猫で行われる一般的な消化管吻合は困難でした。
そのため、消化管を平行に揃えて、側面と側面で吻合する、側々吻合を行い、閉腹しました。
甲羅を閉じ、四角に切開した甲羅の四隅をエポキシ樹脂のパテで固定し、
栄養管理の為の経咽喉頭胃カテーテルを設置し、終刀しました。
術後は胃カテーテルからの給餌や点滴で治療を継続し、
六日目で排便がみられました。
徐々に活動性が上がってきて、3週目を迎える頃には食欲がでてきました。
甲羅を固定しているパテがはずせるのはもう少し先になりますが、経過は良好です。
原因となった床剤は変更してもらいました。