
ミニチュアピンシャー、15歳、避妊メスの症例です。
1年前からくしゃみと鼻汁の症状があり、他院にて内科治療を行っていましたが良化せず、1週間前からは鼻血が出ているという主訴で来院されました。
呼吸様式は鼻が詰まっている呼吸(スターター)をしており、黄色い鼻水が出ていました。

口腔内は歯石の付着と歯肉(歯茎)の腫れが認められました。

X線検査では鼻腔内の不透過性亢進(白くなっている)、右上顎の歯槽骨の融解が認められました。
当院では抗生剤、消炎剤、ネブライザーによる内科治療を行い、一時的に症状の良化が見られました。
しかし、再度症状が悪化し、チアノーゼ(酸欠により舌が青紫になる症状)や苦しくて寝られないなどの呼吸困難に陥ってしまいオーナー様との相談の上、麻酔下での精査を行いました。

CT検査、歯科X線検査にて歯槽骨、口蓋骨(上顎の骨)の骨融解が広範囲に認められました。これにより口と鼻が交通している事(口腔鼻腔瘻)を確認しました。

右の上顎の歯は動揺(ぐらつき)があり軽い力で歯が抜けてしまう程でした。病変の重度な歯を抜歯し、不良肉芽(歯周病菌に感染した歯肉)を取り除ききれいに洗浄した後にフラップ形成(粘膜同士の縫合)を行いました。

術後は呼吸がかなり楽になり、しっかり眠れるようになりました。術後から約5か月たった現在も再発無く良好な経過を追えています。

犬の歯周病関連性鼻炎とは、歯周病により口と鼻の間を隔てている骨(上顎の骨)が溶けてしまい、口と鼻が交通すること(口腔鼻腔瘻)で細菌感染を起こし鼻炎症状が出てしまう疾患です。
症状としては鼻汁やくしゃみ、鼻血が出てしまい、重度の場合は呼吸困難に陥ってしまいます。
治療としては抗生剤や消炎剤、ネブライザーなどの内科治療で良化することもありますが再発も多い為、根治を目指す場合は麻酔下でのスケーリング・抜歯など歯周病治療が必要になります。
鼻炎症状があり内科治療で良くならない場合は歯周病の他に鼻腔内の腫瘍の場合も少なくありません。当院ではCT、歯科X線検査、鼻腔内視鏡により鼻炎を起こす疾患の精査を行うことができるためお困りの方はぜひご相談ください!