
12歳の猫、メインクーン、去勢オスの症例です。健康診断を目的に受診されました。お話をお聞きすると、食欲はありますが最近吐くことが多くなり、活動性も徐々に減ってきているとのことでした。
腹部の触診にて、腹腔内(お腹の中)中央に5cm大の腫瘤が触知されたため、全身の検査を実施しました。
血液検査では軽度に貧血が認められ、X線検査では心肺に大きな問題はなく、腹腔内に腫瘤状の陰影が認められました。超音波検査にて脾臓と連続する不整な腫瘤が確認されました。


脾臓は多臓器と比べて破裂のリスクが高い臓器のためすぐに摘出手術を実施しました。

脾臓には不整な腫瘤ができており表面は脆弱だったため、脾臓の全摘出を行いました。大きな出血もなく術後の回復も順調でした。摘出した際に得られた細胞の検査からは悪性腫瘍が疑われたため病理組織検査の結果を慎重に待つことにしました。

病理検査の結果では『形質細胞腫瘍』という結果でした。これは骨髄腫関連疾患の一つです。骨髄まで侵され悪性挙動の多発性骨髄腫と、比較的良性挙動の髄外性形質細胞腫などに分けられます。
猫での発生は非常に稀で、明確な線引きが難しいとされています。本症例では定期検診を行いながら術後しばらく経過していますが、再発や転移などはなく元気に過ごせています。
今回は健康診断において偶発的に発見され、破裂などの重大なリスクを回避することができました。早期発見と早期治療のための定期的な健康診断が重要であると新ためて実感しました。