犬 乳腺腫瘍 鼠径ヘルニア | 上大岡キルシェ動物医療センター上大岡キルシェ動物医療センター

犬 乳腺腫瘍 鼠径ヘルニア

犬 乳腺腫瘍 鼠径ヘルニア

2018年10月04日 投稿者:staff

カテゴリー: 症例紹介 腫瘍

犬、Mダックスフント、12歳の女の子の症例です。

下腹部の皮膚のしこりを主訴に来院されました。

半年ほど前からしこりが腫大してきて、表面が自潰、出血をしている状態でした。

身体検査、画像検査、細胞検査の結果、

左脇から左股にかけては乳腺腫瘍、

右股は鼠径輪を通じ、腹腔内の臓器がとびだしてしまう、鼠径ヘルニアと診断しました。

 

持続出血により、貧血を起こしており、全身状態も悪化傾向でした。

ご家族さまとも相談の上、ハイリスクではありますが、乳腺腫瘍の摘出、鼠径ヘルニアの整復を行うことになりました。

 

まずは鼠径ヘルニアの整復にとりかかりました。

腹壁の穴を通じ、腹腔内から腸、膀胱、子宮などの臓器が皮下に脱出してしまっている状態でした。

 ヘルニア嚢という膜に包まれいる臓器

ヘルニア嚢の内部の腸

それらの臓器を丁寧に腹腔内に戻し、穴(鼠径輪)を縫い縮めていきました。

 

 

続いて、乳腺腫瘍の摘出にうつりました。

かなり腫大しており、底部の筋肉に固着していたため、腹壁の筋肉を一枚一緒にはがしとるかたちで摘出しました。

術前から貧血状態であったため、一滴も出血させない気持ちで切除をすすめました。

 

手術前の体重は7.65kgで、術後は6.6kgでしたので、摘出した腫瘍は約1kgでした。

 

術後は調子をもちあげるために、一度輸血を行い、その後、徐々に元気をとりもどし、

抜糸ができる頃には、完全に良い状態まで戻っておりました。

 

病理組織検査では悪性筋上皮腫という乳腺癌という診断でした。

悪性腫瘍ではありますが、比較的低悪性度ということと、腫瘍細胞がすべて取りきれていたことにより、要注意な経過観察は必要ですが、良好な結果が期待できる様子でした。

現在では貧血も回復し、良い状態で過ごせております。