は虫類の産卵 卵詰まり【卵胞うっ滞/ 卵塞】

 

卵巣で卵のもと(卵胞)が作られ、卵巣から卵管に入り(排卵)、殻が作られ、産卵されます。

または卵胞が排卵されず、そのまま退縮・吸収されることもあります。

これが一般的な産卵の流れになります。

 

この流れのどこかに不具合があり、

卵胞が吸収も排卵もされない状態を【卵胞うっ滞】、

卵の殻が作られているのに、産卵されない状態を【卵塞】と言いい、

卵塞はその原因によって、3つのタイプに分けられます。

◈ 卵の出口が狭い等、物理的な原因 ⇒ 閉塞性卵塞

◈ 飼育産卵環境の不備、栄養不良、感染症、神経疾患等が原因 ⇒ 非閉塞性卵塞

◈ お腹の中、膀胱への卵の逸脱が原因 ⇒ 異所性卵塞

 

このように、様々な原因でカメを含む爬虫類の約10 %で、毎年卵胞うっ滞や卵塞が報告されています。

 

カメの【卵塞/ 卵胞うっ滞】卵詰まりの症例

ミシシッピアカミミガメ、6歳の女の子の症例です。

2週間前から食欲がなく、去年の夏は産卵していたが、今年はまだ卵を見ていないとのことで来院されました。

画像検査にて、体腔内の卵胞と、これによる肺や消化管の圧迫を確認し、卵胞うっ滞と診断しました。

 

 

排泄もできており、全身状態が落ち着いていることから

ご家族と相談のうえ、通院皮下点滴と内服でのカルシウム投与といった内科治療をはじめました。

 

ご家庭では、

産卵しやすい環境【水場の広さ、産卵場の土の湿度や柔らかさ、水場と産卵場を仕切る等】を整えて頂くこととなりました。

 

治療継続し、地面を掘るような産卵仕草が出てきたので

再度画像検査を行い、卵の殻と、新たな卵胞を確認しました。

現在は経過を慎重に追っているところです。

 

今後の経過によっては、

追加治療として、「子宮収縮剤(オキシトシン)」の注射をご提案し、2、3日経って反応がなければオキシトシンを増量していきます。

 

子宮収縮剤(オキシトシン)が使用できるのは、

排卵された後

(卵胞が卵管に移動して、卵の殻が確認できた後)

そして卵の出口に問題が無い場合となります。

閉塞性卵塞や、卵胞うっ滞では使用禁止となっています。

 

一般的にカメの子宮収縮剤に対する反応は良いのですが、

全身状態が良好でも、産卵する仕草が見られてから

2ヶ月経過して内科的治療に反応がなければ外科的に【卵巣卵管】を摘出することをお勧めしております。

 

飼育下の水棲ガメ女の子では、

早いと3歳くらいで発情をむかえ産卵するようになります。

男のコと飼育していなくても、は虫類の女のコは

【無精卵】を毎年産みます。

 

水棲ガメの産卵時期はだいたい5月頃から9月頃、

この期間に2回、多くて3回産卵すると言われております。

 

だんだん涼しくなって来ていますが

2週間近く食欲が落ちている、産卵が確認できない、目を閉じてじっとしている、排泄が確認できない等、

気になる症状がございましたら、ぜひお早めにご相談ください