猫 食道裂孔ヘルニア 頻回嘔吐 | 上大岡キルシェ動物医療センター上大岡キルシェ動物医療センター

猫 食道裂孔ヘルニア 頻回嘔吐

消化器

猫 食道裂孔ヘルニア 頻回嘔吐

2022年10月17日 投稿者:staff

カテゴリー:消化器 症例紹介

 

日本猫 1歳3か月 去勢雄の症例です。

 

4日前に爪とぎ用の段ボールを誤食してしまい、4日間食後に嘔吐しているという主訴で来院されました。

 

来院時のX線写真では右肺後葉領域の不透過性亢進と消化管内ガスの貯留が確認できます。

 

エコー検査では胃内に液体・異物の貯留が確認できます。

 

消化管内の異物による閉塞は見られなかったため、自然排泄を促す内科治療を開始しました。

 

数日間の点滴通院をしていただき、良化傾向でしたが初診時から6日目に再び嘔吐と元気食欲の低下で来院されました。

 

X線検査では、右肺後葉領域の不透過性亢進と重度の胃拡張が確認でき、異物閉塞によるものだと判断し夜間の緊急手術が行われました。

 

 

重度に拡張した胃が確認でき、一部切開して内容物をサクションと言う吸引機で吸い出しました。

 

 

 

 

切開した胃を縫合し、他の部分に閉塞等の異常がないか確認すると横隔膜の食道裂孔から腹腔内臓器が胸腔内へ脱出している事が分かりました。

 

横隔膜とは胸腔と腹腔を隔てる筋肉でできた膜であり、大動脈裂孔・大静脈孔・食道裂孔という3個の孔が存在します。それぞれ大動脈・大静脈・食道が通っており、今回の症例のように裂孔から腹腔内臓器が脱出してしまうことを横隔膜ヘルニアと言います。

 

脱出している臓器を牽引し、胃の一部や十二指腸、膵臓、脾臓を元の位置に整復しました。最後に脱出していた穴を縫縮し、手術は無事に終了しました。

 

 

手術後のX線写真です。臓器が脱出していた肺野後葉領域の不透過性亢進と、胃拡張所見は消失しました。

 

 

今回の症例は横隔膜ヘルニアの中の裂孔ヘルニアといわれる病態です。

原因は先天的なものや外傷、重度の上部気道閉塞性疾患です。

今回の症例の原因は先天的なもの、あるいは異物誤食による複数回の嘔吐により腹腔内の臓器が胸腔内に脱出してしまった事が考えられます。

症状としては胃食道逆流とそれに伴う食道炎、食道運動性低下あるいは巨大食道症に関連する症状(吐出、嘔吐、流延)などです。

今回の症例は順調に回復しました。