文鳥、1歳6か月齢の女の子の症例です。
力むことが多く、便が出ない、総排泄孔付近を気にしているとのことで来院されました。
触診時に腹部に卵を疑う硬いものが触知されました。
レントゲン検査を実施し、卵を一つ確認しました。
卵詰まりと判断し、飼い主様とご相談の上、腹部を圧迫することで卵の排出を促す圧迫排卵処置を実施することとなりました。
時間をかけ、腹部を緩やかに圧迫し、排卵を促していきました。
最終的に、形の良い卵が1つ排出されました。
カルシウム、抗生剤、消炎鎮痛剤などを点滴、注射、投薬処方をし、特に大きな問題なく帰宅しました。
鳥の卵詰まり(卵塞)の原因は、寒冷や環境変化などのさまざまなストレス、カルシウム不足、不適切なカルシウム/リン比の食餌、過産卵による低カルシウム血症および卵殻形成不全、ホルモン異常による産道の弛緩不全、卵管口閉鎖、骨格異常、腹壁ヘルニア、高齢など多岐にわたります。
すぐに症状を示さないこともありますが、元気食欲の減退、膨羽、排便障害、糞便への血液付着などが見られることが多く、低カルシウム血症が併発している場合には、虚脱してぐったりするような様子が認められる場合もあります。
治療法としては、今回のような圧迫排卵処置のほかに、カルシウム投与や外科的摘出があります。
カルシウム投与治療は体への負担は少ないですが、個体や状態によっては効果が弱く、排卵に時間がかかったり、排卵されない場合もあります。
外科的摘出は、排卵効果としては最も効果の高い処置にはなりますが、全身麻酔をかけたり、開腹していく必要があるため、体への負担が最も大きい処置になります。
圧迫排卵処置も、カルシウム投与のみの治療と比較すれば効果は高いものとなりますが、出血の可能性、体力消耗、保定のストレスなど体への負担は大きい処置となります。場合によっては鎮静をかけて処置をすることもあり、外科的処置と同様に命に関わってくる可能性もあります。
どの治療においても、どうしてもリスクは免れないため、症例の症状や状態などから、飼い主様とよく相談をして治療方針を決定していくことが重要と考えられます。