フェレット、1歳の男の子の症例です。
元気、食欲の低下、咳を主訴に来院されました。
血液検査では貧血、血小板減少、高蛋白血症をみとめ、
画像検査では脾臓の腫大、リンパ節の腫大をみとめました。
検査結果から、リンパ腫、コロナウイルス感染症を疑い、組織を採材し、病理検査を目的に開腹手術を実施しました。
脾臓、腹腔内リンパ節各部位から採材し、閉腹しました。
病理検査の結果は化膿性肉芽腫性炎症であり、さらに追加の特殊免疫染色検査の結果から、全身性コロナウイルス感染症と確定診断しました。
全身性コロナウイルス感染症は致死的であり、生存期間中央値が3ヶ月と報告される非常に予後の悪い疾患です。
根治治療は確立されておらず、緩和治療としてステロイド治療が推奨されておりますが、寛解まで至ることはありません。
当院でも過去に同疾患と診断し、ステロイド治療で一時的な緩和のみで、長期生存できなく、救えなかったフェレットの子達を多く経験しており、常に新規治療法を模索しておりました。
そこで、近似する病態を示す、猫のコロナウイルス感染症(FIP)に対する治療薬として注目され、海外では第一選択薬としてガイドラインが整備され始めているモルヌピラビルという抗ウイルス薬の投与を検討しました。
COVID -19の前臨床研究において、フェレットへのモルヌピラビル投与の安全性は確認できたため、ご家族さまと相談の上、モルヌピラビルによる内科治療を行うことになりました。
投与後1週で症状の緩和が見られ、4週を迎える頃には、各種検査結果が劇的に改善し、12週後に投薬を終了しました。
その後も経過を追っておりますが、良好な経過をおえております。
モルヌピラビル治療は新規治療であり、合併症や病気の再発などの未明な点も多くあるため、今後も慎重な経過観察を行い、医学的考察を積み上げていく必要がありますが、悪性度の高い疾患に罹患してしまったフェレットの子達を救命できる革命的な治療法である可能性があると考えております。
今後も最新の報告、情報を集積し、積極的に治療を行なっていきます。