犬、ミニチュア・ピンシャー、14歳、男の子の症例です。

 

五年前から肘部にあったしこりがここ一年で急速に増大し、自壊、出血を起こしたため、近医を受診し、手術を勧められたため、当院を受診されました。

 

腫瘤のサイズ、底部の固着具合、細胞検査の結果から、完全切除を期待するのであれば、断脚が必要な状況でしたが、ご家族さまは脚は残し、腫瘤のみの切除を強く希望されておりました。

腫瘍の完全切除が困難になることや、腫瘤摘出後の皮膚欠損部位を覆うために他部位から皮膚を引っ張ってくることになり、術後の術創ケアが大変なことをご家族の皆様で検討、相談してもらった上で、腫瘤のみの切除を選択されたため、手術を行うことになりました。

腫瘤の底部は肘部の筋肉や骨組織に固着していたため、隣接組織から削ぐ様に剥離していき、なんとか腫瘤を切除しました。

腫瘤切除後の皮膚欠損部位はかなり大きく、脇部の余剰皮膚を整形し、肘を覆う様に皮膚縫合を行なっていきました。

縫合終了後、皮膚緊張部位に張力を減ずるためにメッシュ様皮膚切開を加え、終刀しました。

 

病理組織検査では軟部組織肉腫という悪性腫瘍で、摘出状態は良好でした。

しかしこの腫瘍は局所再発率が高いため、経過は注意が必要です。

 

術後の経過は良好で、傷もきれいに癒合しました。

現在は再発の可能性を下げるため、抗がん治療を行なっております。