高齢のクサガメの症例です。

野外でなんらかの野生動物に襲われて右前肢から出血しているとの主訴でご来院されました。

来院時も出血が認められる状態だったので、止血処置を行いつつ創部を確認したところ

右前肢が上腕骨の部分で噛みちぎられており、骨がむき出しの状態でした。

(下の図のオレンジの点線部分から遠位が無い状態です。)

そこで、右前肢の残った筋肉と皮膚を寄せて骨の断端を覆うように縫合処置を行いました。

下は縫合後の創部の写真になります。

毎日消毒を行い抗生剤入りの軟膏を用いて創部を保護しつつ、

創部を衛生的に保つため水中ではなく陸上での生活を開始しました。

最初の1ヵ月は完全に陸上で生活してもらい、傷が安定してきたところで少しずつ水中にはいってもらいました。

水棲ガメは陸上で食事をしないことが多いため、強制給餌も検討しましたが

こちらの症例に関しては少量ずつではありますが自力採食してくれたため見送りました。

約4ヶ月後、創部に肉芽組織が形成され傷口はかなり安定しました。(下の写真)

 

約7か月後、表層の痂疲が外れ内部に形成された皮膚が露出しました(下の写真)

 

約9か月後には完全に傷が安定したため治療を終了とし、今まで通り水中での生活に戻ってもらいました。(下の写真)

 

現時点で傷はここまで治癒しております。(下の写真)

この時期、外で飼育している動物さんにおいては

暑さによる熱中症などの危険や野生動物に襲われる危険など多くの危険が存在します。

できるだけ目の届く範囲で見守り、環境の変化や周囲の危険から守ってあげてください。