犬、Mダックスフント、12歳の女の子の症例です。
下腹部の皮膚のしこりを主訴に来院されました。
半年ほど前からしこりが腫大してきて、表面が自潰、出血をしている状態でした。
身体検査、画像検査、細胞検査の結果、
左脇から左股にかけては乳腺腫瘍、
右股は鼠径輪を通じ、腹腔内の臓器がとびだしてしまう、鼠径ヘルニアと診断しました。
持続出血により、貧血を起こしており、全身状態も悪化傾向でした。
ご家族さまとも相談の上、ハイリスクではありますが、乳腺腫瘍の摘出、鼠径ヘルニアの整復を行うことになりました。
まずは鼠径ヘルニアの整復にとりかかりました。
腹壁の穴を通じ、腹腔内から腸、膀胱、子宮などの臓器が皮下に脱出してしまっている状態でした。
ヘルニア嚢という膜に包まれいる臓器
ヘルニア嚢の内部の腸
それらの臓器を丁寧に腹腔内に戻し、穴(鼠径輪)を縫い縮めていきました。
続いて、乳腺腫瘍の摘出にうつりました。
かなり腫大しており、底部の筋肉に固着していたため、腹壁の筋肉を一枚一緒にはがしとるかたちで摘出しました。
術前から貧血状態であったため、一滴も出血させない気持ちで切除をすすめました。
手術前の体重は7.65kgで、術後は6.6kgでしたので、摘出した腫瘍は約1kgでした。
術後は調子をもちあげるために、一度輸血を行い、その後、徐々に元気をとりもどし、
抜糸ができる頃には、完全に良い状態まで戻っておりました。
病理組織検査では悪性筋上皮腫という乳腺癌という診断でした。
悪性腫瘍ではありますが、比較的低悪性度ということと、腫瘍細胞がすべて取りきれていたことにより、要注意な経過観察は必要ですが、良好な結果が期待できる様子でした。
現在では貧血も回復し、良い状態で過ごせております。