ハリネズミ 、2歳、女の子の症例です。
後腹部のしこりを見つけ、来院されました。
診察室では丸まってしまうため、触診ができず、
後腹部から陰部にかけての巨大な腫瘤を認めましたが、周囲構造への侵襲度合いが読めない状況であったため、外科的治療も想定した上で麻酔下検査を行うことになりました。
麻酔下検査では、陰部の巨大な腫瘤が尿路を圧迫変位させていることがわかりました。
また、胸部皮下に腫瘤がある、脾臓が腫脹している、子宮粘膜が肥厚していて、子宮内液体貯留があることもわかりました。
ご家族さまと相談し、負担は大きいですが、見つかった全ての病変に対処することになりました。
まず胸部皮下腫瘤を切除し、そのまま開腹し、卵巣子宮を摘出、脾臓に針生検を行いました。
陰部腫瘤の切除では、周囲構造である消化管や尿路との固着、巻き込みを何度も確認しながら剥離を進めていきました。その中で、やはり尿路を巻き込んでいるため、尿路を損傷せずに腫瘤を切除することは不可能であることがわかりました。
陰部腫瘤を切除後、消化管に損傷がないことを確認しました。
尿路損傷部位を詳細に把握するために、膀胱を切開し、そこからカテーテルを逆行性に通し、遠位端を確認しました。
その後、新たな尿道口を形成し、終刃しました。
術後の排尿状態は良好でした。
病理組織検査では
胸部腫瘤は乳腺癌、脾臓は髄外造血(針生検による細胞診)、子宮は肉腫、陰部腫瘤は肉腫
という結果でした。
子宮と陰部腫瘤の肉腫は、組織学上、類似していたため、転移病変である可能性が高いと考えられました。
現在は術後治療として、抗癌治療を行なっており、局所再発や遠隔転移を認めず、経過良好です。