犬、シェットランドシープドッグ、11歳、男の子の症例です。

健康診断で、左側の副腎の腫大化を認めました。

 

 

健康状態は良好で、臨床症状はなく、

種々の追加精密検査においても、大きな異常は認められませんでした。

要注意で経過観察を追っておりましたが、腫大傾向がみられたため、

両側精巣内の腫瘤、右前肢肉球間皮膚の腫瘤とともに摘出手術を行うことになりました。

 

副腎は腹腔内で一番深い、背中側に存在するため、

常法である腹部正中切開ではアプローチが困難でした。

そのため、正中切開に傍肋骨横切開を加え、左側副腎腫瘤にアプローチしました。

腫瘤は近くを走行する大血管をはじめ、隣接する腎臓に流入する血管や消化管に流入する血管に近傍、癒着しており、それら血管系を温存する必要がありました。

単極電気メス、双極電気メス、シーリングデバイス、綿棒、直角鉗子などを駆使し、丁寧に剥離を進め、腫瘤を摘出しました。

腫瘤摘出後には大きなスペースが空きました。

その後、変形がみられた肝臓を一部切除し、閉腹し、

両側精巣、前肢肉球間腫瘤を切除し、終刀しました。

摘出した腫瘤二つと肝臓、精巣は病理組織検査を行い、

副腎は副腎皮質腺腫、肉球間皮膚腫瘤は形質細胞腫、肝臓は肝細胞空胞状変性、精巣は間(ライディッヒ)細胞腫という診断結果でした。

完全摘出後の予後は良好とされる腫瘍でしたので、今後は要注意で経過観察をしていきます。