15歳齢のクサガメ 女の子の症例です。

4日前に建物4階分の高さを落下したとのことで来院されました。

食欲、活動性の低下が認められている、とのことでした。

腹側の左右縁甲板が頭側から尾側にかけて割れていることを確認しました。

右側の甲羅骨折部位からは、壊死した体腔内組織が脱出していました。

脱出した組織は、どの臓器の一部かは不明でした。

処置を行うこともリスクはありましたが、残しておくリスクも考慮して、相談の上、切除を実施しました。

   

X線検査においては、複数の卵や異物を疑う所見は認められましたが、肺などの体腔内組織に明らかな損傷を疑うような所見は認められませんでした。

骨折に関しては、抗生剤や消炎鎮痛剤を使用しながら、損傷部位を防水テープで固定しつつ、経過を追うこととなりました。

週に1回の通院を経て、食欲や活動性は改善しました。

1ヵ月後に防水テープを除去し、骨折部位を確認したところ、癒合している様子は認められませんでした。

パテ材を使用し、骨折部位を接着させていく方法に変更しました。

  

現在は良好な経過をたどっています。

今後、パテ材を外すことは困難と思われますが、このまま経過を追っていきたいと考えています。

カメの高所からの落下事故は年に10件程度来院されます。

落下事故においては、今回のように、甲羅の骨折が多く認められます。

今回のようなパテ材での処置以外にも、骨折した部位によっては、ピンやワイヤーなどを使用して骨折を整復する場合もあります。

今回の症例は回復が認められましたが、中には亡くなってしまう場合もあります。

落下事故は特に日光浴中に起こることが多いようです。

カメを飼育されている方は、くれぐれも落下事故に注意していただきたいと思います。